月観て走る

雄叫びメモ帳

「劇場版 おっさんずラブ 〜LOVE or DEAD〜」の感想文 良いところ10個、悪いところ11個 ※注意/含ネタバレ

今からこの映画の良いところ10個、悪いところも11個言います。
ネタバレを大いに含みますので、鑑賞前の方、マイナス意見を目に入れたくない方はブラウザをそっとお閉じください

 

 

 

 

 

 

まず最初に大声で叫びたいです。
サウナキャットファイト最高。

謎のいい体(複数)が大盤振る舞いどころではない。特盛。おかわり自由。フルコース。満漢全席。
いやツッコミどころは多々あるとしてもそれでもゲラゲラ笑ってしまう暴力的な笑いの連打。水掛けビシャー! 今すぐサウナの壁になりたい。

先日まで私的カッコいいがインフレした男大賞は「実写版進撃の巨人」のシキシマさんだと思っていたのですが、狸穴さんにも大賞を捧げたいです。セクシーが過ぎる。毛穴という毛穴から沸々とセクシーが吹き出しているのです。ブランデーと素肌にガウンが似合う男オブザイヤー最高金賞受賞。モンドセレクション出品。
弟にしたいオブザイヤーは君だ、ジャスティス。何なんだその子犬のような完璧なコミュ力と愛らしさの源泉かけ流しは。そして子犬のような後輩とガチのマウント合戦する部長最高。サウナの次はうどん屋の壁になろう。牧とのキス権の奪い合いも最高。そんなことしてる場合じゃ無いよはるたん死んじゃうよ!!と思いつつも面白いんだからしょうがない。廃工場の鉄骨にもなろう。

 

と言うかただただ、もう絶対にに見られないと思っていたあのメンバーたちが、一人も欠けることなく揃った姿が、鮮やかな掛け合いが、またもう一度見れたというだけでもう既に感無量なのです。

まあとにかく一度は見に行きましょうよ。話はそれから。

 

 

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ここからの文章はネガティブな内容を含みます。

この映画に好印象を抱いている方に対して、否定意見をぶつけて傷つけてしまうことは本意ではありません。

目に入れたくない方はお引返しください。

 

 


もしもあなたがすごいアクションが見たければ、
「マッドマックス」でも「ワイルド・スピード」シリーズでも「イコライザー」でも「ミッションインポッシブル」でも「アイアンマン」でもまあ何でもいいや、選り取りみどりで唸るほど良作はあるし、


もうちょっと爆破とは無縁の静かなテーマをお望みなら、

「ムーンライト」でも「グレイテスト・ショーマン」でも「ドリーム」でも「グリーンブック」でもお好みで、


今の空気を感じるサクッと見れるドキュメンタリーがお好きなら、ネットフリックスを漁ればわんさか出てくるし、


心の繊細な機微にそっと触れたければ
単館系の映画館にフランス映画でも探しに行きましょう。

 

 

この映画はそれらのどの要求も満たしてはくれないのを知っている。

でも映画公開が決まった時からずっと楽しみで、ワクワクして、指折り数えて待っていた。

 

 

不動産会社社長肝入りのプロジェクトにリアリティが皆無だろうが、
サウナがひんやり室温だろうが、
花火大会が合成丸だしだろうが、
燃えさかる廃工場の炎が熱そうにも煙そうにも見えなかろうが、
そもそも海外ロケ部分と廃工場救出劇を押し込んで予算とか尺とかの配分の概念がいくら何でもはちゃめちゃではとか、
数分おきにCMで中断され常に引きを作り続けるドラマのリズムを映画の二時間に持ち込んだら破綻するのではとか、
各種名作映画の雑なオマージュにリスペクト精神を感じなかろうが、
そんなのは全部些末なことです。

あくまでこれは待ちわびたファンに向けた一年ごしのご褒美で、お祭りで、
わたしはお祭りを楽しみ行ったのですから。

お祭りに行くからには、大いに楽しむつもりでした。

 

ただ、劇場版ではドラマ版にあった、コメディというジャンルでセンシティブなテーマを扱うことへの、「恐れ」と言うと少しニュアンスが違うな、

「誰かを傷つけかねないテーマだ」

と言うことへの覚悟がひっそりと抜け落ちてしまっていた、ように思えることが引っかかって仕方が無いのです。
多様な愛、大仰で見ている側は思わず笑ってしまうけれど本人は真剣な、意固地過ぎて見ている方は歯ぎしりしたくなるような、不器用な人たちに向ける暖かな目線が、確かにあったはずなのに。

 

元々おっさんずラブというドラマには少なからずデリカシーに欠ける部分があります。
BLというジャンルがファンタジーと前提するにしても、誰かを傷つけかねない表現を多分に内包しています

(単発ドラマ版と比べれば格段にマイルドになったとは思いますが…でもハセ君もめちゃくちゃ可愛いです)
部長の純愛にせよ、笑って見てはいるものの、冷静になればどう見ても職位を利用したパワハラストーカーではとか、
家事一切を引き受け愛されなくてもいいと尽くし、挙げ句相手のためにと身を引く牧の振る舞いは、まるで古臭い演歌に出てくる「無償の愛で尽くす女」の写し絵じゃないのかとか。
ルームシェアした後輩に家事丸投げしてしょっちゅう泥酔帰宅しては快適な暮らしだーーなんて呑気にニコニコしている春田さんは、

天真爛漫を通り越して、愛云々以前に家から蹴り出されても許されるクズの振る舞いです。

 


それでも、それら全部ブン投げて、まるでそこにいるかのようにキャラクターたちが浮かび上がりたまらなくチャーミングに思えてしまった瞬間、私はこのドラマを「好き」になったのです。

愚かしく見えようが、人としてその仕打ちはどうかと言う気持ちが脳裏を過ぎろうが、デリカシーに欠けていようがステレオタイプの偏見に塗れていようが、
それを上回る何かがあれば全然良いのです。
私たちは道徳や修身の教科書を読みたい訳ではなく、そしてまた私たちの日常も教科書とは程遠い矛盾に充ちたものなのですから。

 

それは本当に、とても危なっかしい奇跡のようなバランスで、2018年のあの時点で放映されたからこそ、ギリギリ成り立ったドラマだったと思います。

 

 


きっと私は劇場に2回目を見に足を運ぶことでしょう。

サウナシーンでクスクス笑い、

小麦粉をかぶった春田さんにニコニコし、

成長したマロの姿に蝶子さんと共にホロリとし、

春田さんと牧の成長に静かに笑み崩れる。

揺るぎないものになった二人の絆に。

 

でもまあなんていうか。ちょっとつらい。