【読書メモ-10】小林カツ代の日常茶飯 食の思想
「小林カツ代の日常茶飯 食の思想」
小林 カツ代 (著)/河出書房新社(2017年)
カツ代が怒っている。
静かにフツフツ沸き立っている。
それは一過性の怒りでは無く、 こっとり煮込み続けるシチューの泡のように、
底の方から穏やかに絶え間なく吹き上がり続けている。
いつかテレビで見た鮮やかに赤い口紅を塗って笑顔が素敵な家庭料 理のセンセイ、 という彼女のイメージを真っ赤に塗り潰すように。
その怒りはジワジワとこちらにも滲みてきて、
また彼女のレシピのひとつひとつが、 単に美味しいものを作りたいという単純なものでは無く、
ある種の使命と革新の思想を帯びたものであったことが伝わってく る。
掲載の文はエッセイ、対談、講演会の書き起こし… 媒体は様々なのだけども、どれも切れ味は共通している。
数十年、プロとして走り続けて来た女の怒りがそこにある。