月観て走る

雄叫びメモ帳

推しにメンチを切って殴られ退場する名もなきモブチンピラに私はなりたい:ハイロー感想のようなもの

推しにメンチを切って殴られ退場する名もなきモブチンピラに私はなりたい。


まずメンチを切ろうと思う。
メンチを切るなんて僥倖はモブの身には勿体無いのではという思いもある。しかしここは自分の気持ちに素直に身を任せたい。

目と目が合ったその瞬間、あっ負けた、とモブは悟る。
コンマ1秒か2秒、拳を交わす前に負けを悟るまっすぐな心のモブに私はなろう。

 


できれば最初の一発目は顔面に。
服なんていう野暮な夾雑物で相手の拳を遮りたくない。
けれども最初の一発目は躱したい。一撃で倒れる不甲斐ないモブだなんて思われたくない。
肌の一ミリ上を掠めていく風圧を感じたい。
かわした瞬間、
「コノヤロウ」って推しの闘争本能が剥き出された現場を目前にしてヒリヒリしたい。
「あ、俺死んだ」って背中までビリビリビリビリ走る電流のように原始的な恐怖に震えたい。

 


次の一発は腹で受けたい。しかしささやかなモブのプライドでまだ倒れるわけにはいかない。
倒れず痛みに呆然としつつもヘラヘラ笑って立ち上がることでようやく1000人はいる有象無象のモブから「有象無象よりちょっと上のモブ」に昇格できる気がする。
ここでちょっと洒落た挑発や古今東西の名作名画をもじった動きをしたいところだけれども、敢えて踏みとどまろう。
私はモブだ。一モブとして生き一モブとして無様に倒れるべきだ。
渾身の一撃でなくていい、つぎのモブ戦に移る前のつなぎの一撃でいい。
それだけで十分だ。

そして次の瞬間無様に地に伏して思う。
今日はいい一日だった、と。

 

 

あああああ日向紀久に殴られてえなあ。