月観て走る

雄叫びメモ帳

HiGH&LOW THE MOVIE感想「火炎放射器で街を焼けばいいってものじゃ無かったよ」 ※注 含ネタバレ

火炎放射器で街を焼けば早いのに」

映画開始から数分、日本が舞台とは到底思えないスラム街に上がった、相当に豪勢な爆煙を見ながら私は考えていました。

「何故銃火器を出さない」

プロレスのように煽っていくスタイルの、やたらめったらカッコいいイケメンに次ぐイケメンの嵐の登場人物紹介を見ながら考えていました。

「ここまで無法が許される街なら、装甲車1台チャーターして商店街を蹂躙するのもありじゃないの」

でも焼かないのです。
蹂躙しないのです。
しかし、一瞬この映画ぬるいのではと今更出遅れ視聴もいいとこなタイミングで見始めて思った私を飾らない拳でぶん殴ってくるような、そこには確かな秩序と美しさがありました。

人はそれをハイローと呼びます。

 


映画開始から数分。私は混乱していました。

「何か凄いことが起こっているが何が凄いのかさっぱりわからないがしかし今見ているこの映画と言うには豪快すぎる何かが血管が切れるくらい面白い事だけは理解できる」

正直なところ私は人の名前と顔を一致させることが相当に苦手であって、冒頭のざっくりあらすじ紹介ムービーでは主役級のチームの名前が覚えられず、ましてや彼らの背景などさっぱりわからない状態でした。
しかもわからないままその後特にフォローも無くジェットコースターのように話は進み、立ち位置が分からないがスゲえいかした衣装のイケメンが現れるたびに異様にカッコいいBGMが爆音で流れ出し、わからないままに人は素手及び身近な道具類でぶっ飛ばされ、その割に誰も死なないようです。

 

良くわからない。これは何だ? 


何物だ? 

わからないものを前に、HULUの停止ボタンを押して離脱できない自分がいる。

これは何だ?


映画が後半戦に達しても尚、私は混乱していました。しかし徐々に、混乱を乗りこなし始めている自分を感じていたのです。
主役級の殴り合いの後ろまで一切の手抜きなし、画面の隅々まで大量の肉体が乱れ飛ぶ殴り合い映像は異様に美しく、高校生にしてはやや年配の方々が集う高校にも違和感よりも血中アドレナリンの増加を感じる程に僅か1時間で成長を遂げていたのです。

 

鬼邪高校のチームを満載した黒い無骨なトラックの後ろから走り込んでくるホワイトラスカルズのスタイリッシュな白いバイクの美しい対比、続けざまにアメ車のボンネットに乗った法被姿の妖艶な男性(後に彼が日向マハラジャボンネット紀久と呼ばれていることを知る)が気だるくやってきたシーンを見たときの衝撃はちょっと言葉では言い表せないです。


もはや言葉など必要は無いのでした。ただただ感じるだけです。美学に満ちた男たちの殴り合いを。
ここに火炎放射器を置けば、マシンガンを置けば、爆薬を置けば、絵面は派手になるでしょう。だがその瞬間男子たちの美は死ぬのです。

それが理解できました。

 

そう男子。男子です。これは男の子たちの夢の国です。
夢の国にリアルという野暮は持ち込めないのです。誰だって現実で十分事足りているのですそんなもの。中途半端にリアルぶったストーリーならいくらでもあるでしょう。そこに嘘が一個見出されればうんざりする。でも嘘が百個、千個あれば? 嘘を美しく彩る確かな技術があれば? そこにパラダイスが生まれます。
彼らは信じられないくらい高く飛ぶ。千人の悪漢に負けないくらい強い。強いことは高潔であるということです。
それで十分で、それはとても美しくて、たまらない2時間でした。

 

そういう映画でした。

完敗です。

 

 


日向ボンネットマハラジャ紀久さん、ザム見た時点ではこういうキャラだと早合点してました
全然違いました。

f:id:tsukimite:20171212063408p:plain 

 

 

high-low.jp